お客様からのご質問のなかには「長野県内のものだけですか?」といったものもよくございます。
当店で「民芸」のくくりに入るものは、もしかしたら長野県内のものだけにこだわって置いている、と思われるかもしれませんが、ではなぜ県内産のものが多いのかについて理を書いておきたいと思います。
皆さんも「民藝」というカテゴリーの情報を雑誌やその他のメディアでよく目にするのだと思いますが、私の感じていることで漢字で表すなら、当店の品物は「民芸」なのかな、と思っています。
敷居をそこまで高く設定しなくても、手仕事に携わる人々はここ日本にはほんとうに沢山いらっしゃるもので、作り手それぞれは皆さん同じように「良いもの」を作りたいという思いがあって真摯に作られています。
そういった作り手のお気持ちがすでに現れている商品には、私個人が点数を付けたり、良し悪しを決めたりできるものではもちろんありません。それぞれの作り手の品に「なんかいいな」と感じられるものがあれば、どこかにきっといるはずの、同じ感じ方をしていただける購入者の方の物になっていただけることを願って、商品選びをしています。
道具のなかに見いだせる「なんかいいな」を感じられる物であれば、さまざまな道具を見つけてきたいと思っています。
さらに、そういった手仕事から生み出される道具は、できれば普段の自分たちの身近な地域で作られているものから、徐々に暮らしに取り入れていきたいのです。その観点こそが「民芸」を大切にする思いに込められているのではないかと、さまざまな「みんげい」にまつわる書籍等を読んできて、私なりに解釈したものです。当店の品揃えに長野県内のものが多いと感じられるのは、そういった理由からです。
地産地消にこだわっているとか、エコだとか、サステナブルだとか、SDGsだとか、時代に合わせて流行り言葉は変わりますが、そういった流行りの気分でこの店を開いたわけでもありません。また、人気だからとか、有名だからといった観点だけで品を選んできているわけでもありません。
日々の人間の暮らしというのは、道具によって助けられ支えられている、道具は暮らしの知恵が育んでいるものであることに気づいたとき、理にかなった道具は、これから先も使いたいし、伝え続けられればいいな、と思い描きました。そんな気持ちから店を作り、そして日々店を運営しております。
道具は”雰囲気作り”のための飾りものではなく、毎日どんどん使って使って使いこなし、すり減ったりへたってきたらまた新しい物と交換する。そういった人間の営みこそが、民芸と呼ばれる職人の技を廃れさせないものだと信じています。
”いいものだから!”と、本当に良い道具を大切に棚のどこかにしまい込み、普段はすぐ壊れてもいいと思われてしまうプラスチック製品などで代用する……。こういった行いは、逆の連鎖を生むはずです。すぐ壊れてしまうようなものが流通の大半を締めてしまい、本当に良い道具こそが見放される状況を作ってしまうのではないでしょうか。
こういったおかしな連鎖を変えるなら、道具に感謝して、作り手に感謝して、どんどん使い込んでいきたいものです。
回答が一番最後になりましたが。当店で扱っている商品の全体を見ると、こう見えても、長野県内でつくられているものが3割ほどかと思われます。全国各地、はたまた世界のどこかで良い道具はたくさん生み出されていますので、長野県内にはないものは、積極的に日本にとどまらず各地から仕入れております。
当店の品揃えは「道具であること」が基準です。道具のなかからさらに分類したときに、それが「民芸」なのかどうかは、民芸・民藝のくくりが曖昧であることから見ても、その判断は人それぞれに委ねさせていただきたいと願います。